芦屋国際ファンラン感想記

 

よく試合などに魔物が住んでいるという言い方をするが、今回のマラソンには、僕にとっての魔物が住んでいた。

朝の食事を済ませた私は、大会会場へ向かった。途中、梅田で長原成樹を見かけた。その隣に素人と思われる人が立っていた。どうやら探偵ナイトスクープの取材らしい。しかし、今日のマラソンに気合いを入れていた私は、周りの人が立ち止まってその取材を見ている中、その脇を颯爽と通り過ぎていった。

会場に着くと、私は着替えを済ませ、結構時間があったので、念入りに準備運動をした。そして集合時間がやってきた。が、その時である。私は、あることに気付いた。「ない!」いつもは、シューズにチップが結びつけられている。そして、スタート地点とゴール地点の通過時にチップがそれを感知し、完走時間が計測されるのである。それを私は、シューズに付けていなかったのである。私は、近くの人に尋ねた。「今回、チップはないんですか?」すると彼は、「ありますよ。もらった袋の中に入ってますよ。」私は、スタート15分前から走り回るはめになってしまった。まず、手荷物置き場。「ない!」そして更衣室。「ない!」仕方なく、大会事務局のテントに行き、代わりのチップを貸して頂いた。結局、チップが私の荷物に紛れ込んでいたことが分かったのは、レース後のことであった。無事、5分前には、チップの結びつけられた私のシューズはスタート地点に立っていた。そしてレースが始まった。

序盤、私はとばしていった。遠く向こうには、先頭の誘導バイク、そして先頭グループが見えていた。何とかそれが見えなくならないようにと頑張って走った。3km地点は、10分30秒くらいで通過した。かなり速いペースである。前半とばしすぎたので、徐々にスピードを落とし、後半に繋げようと思っていた。

その後、すぐに悲劇はやってきた。練習の時に少し痛めていた右足が痛み始めたのである。それでも「いける、いける」と自分を励まし、走り続けた。が、走れば走るほど、右足は悪化していき、やがて私の足は止まった。残り10km。棄権だけはしたくなかった。気合いで、歩き、小走り、歩き、小走り、それを繰り返し、少しずつ進んでいった。マラソンを始めて以来、初めての「屈辱」であった。気持ちは走りたいけど、足が走れない。私は、もはやランナーではなかった。ランナーとは、走る人である。私は、ただ、歩いていた。屈辱を味わいながら。こうなると、後は、完走するだけである。何とか前に進み、21km走り抜くんだという気持ちだけである。

たまに見えてくる給水所が私の支えであった。給水所には、遠くからも見える"EVIAN"と書かれた旗が掲げられていた。それが見えたときの喜び。普段、マラソンで水をあまり飲まない私だが、今回に限っては、給水所の度に、一気で飲んだ。

やがてゴールが見えてきて、ゴールをしたのだが、普段確認するタイムもその時は確認するのを忘れる程であった。ただ、2時間10分かそれ以上かかったことはお伝えしておこう。

マラソン人生、初めての歩き、初めての屈辱、初めての挫折。今日からしばらくは練習ができない。これからどうするかは、これから考えることとする。('00 4/9)

 

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